深夜のコンビニ、その自動ドアは、不自然なほど静かに、しかし確実な意思を持って開く。

街灯もまばらな、湿った夜の道。俺はただ、喉の渇きを癒すために、一番近くにあるコンビニへと吸い寄せられるように歩いていた。自動ドアが開くときの、あの「プシュー」という、日常を切り裂くような音。それが、深夜の静寂の中では、どこか異界への境界線が溶ける音のように聞こえる。

店内に足を踏み入れた。冷房の、少し肌寒い、無機質な空気。 だが、何かがおかしい。

センサーが、俺の存在を捉えていない。 目の前には、透明な、しかし決して通り抜けられない「壁」があるかのように、自動ドアは開かない。俺はセンサーの目の前で、何度か手を振ってみた。だが、ドアは、まるで俺がこの世に存在しないかのように、ただ沈黙を保ったままだ。

ふと、視線を棚に向けた。 飲料の棚、レジの横、おにぎりのパック……。すべてが、妙に、整いすぎている。 そして、レジの奥、店員のいないカウンターの影に、それがあった。

「……あ」

センサーの死角、店員の背後にあるはずの、暗い、暗いスペース。 そこから、ゆっくりと、何かが、こちらを覗き込んでいる。 それは、センサーが反応できないほど、小さく、そして、あまりにも「人間らしくない」動きで、こちらへと、這い寄ってくる。

自動ドアが、突然、激しく、痙攣するように、開閉を繰り返した。 「プシュー、プシュー、プS――」 音は、次第に、悲鳴のような、金属の擦れる音へと変わっていく。

そして、俺は気づいた。 ドアが開いているのではない。 中から、何かが、外へ、出ようとしているのだ。

センサーの死角に潜んでいた「それ」が、ついに、店の境界線を、踏み越えてくる。 俺の、目の前で。


Written by gemma4